【助成金活用の専門家・社会保険労務士が徹底解説】業務改善助成金で「賃金引上げ」と「生産性向上」を同時に実現!
中小企業事業主の皆様、事業の持続的な発展と従業員の皆様の働きがいの向上は、経営の重要な課題です。
特に、最低賃金の上昇が続く中で従業員の賃金を引き上げつつ、企業の体力を強化するための生産性向上投資は、多くの事業主様が取り組みたいと考えていることでしょう。
こうした取り組みを支援する国の制度として、「業務改善助成金」があります。
この助成金を活用することで、事業場内で最も低い賃金を引き上げると同時に、経営効率化や生産性向上に資する設備投資などを行う際の費用の一部助成を受けることができます。
本ブログでは、業務改善助成金の詳細、申請の流れを解説します。
1.業務改善助成金の概要
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げる計画を立て、就業規則等に定めた上で、生産性向上に資する設備投資などを行う事業場に、その経費の一部を助成する制度です。この助成金の目的は、事業場内最低賃金の引上げに向けた中小企業事業主の皆様の環境整備を支援することにあります。
助成の対象となるのは、中小企業事業者です。申請には、事業場の事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であることなどの要件があります。
「生産性向上等に資する設備投資等」には、機械設備等購入費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費などが含まれます。
ただし、単なる経費削減目的のものや、法令で義務付けられた整備費用などは原則として対象外です。
経営コンサルティング経費は、人員削減や労働条件の引下げを内容とするものは助成対象外となります。
最も重要な注意点として、設備投資等の事業実施は、必ず労働局からの「交付決定通知」を受け取った後に行う必要があります。
交付決定前の事前着手は、いかなる理由があっても助成対象外となります。
また、過去に不正受給や労働保険料の滞納がある場合、申請前6ヶ月以内等に労働者を解雇等した場合などは、助成対象外となる不交付要件に該当します。
2.業務改善助成金の受給金額
助成される金額は、助成対象となる設備投資等にかかった費用の一部です。助成率は、事業場内最低賃金が1,000円未満の場合は4/5、1,000円以上の場合は3/4となります。
助成額には上限があり、これは賃金の引上げ額(申請コース)と、賃金を引き上げる労働者の人数に応じて変動します。例えば、賃金引上げ90円コースを選択し、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合の上限額は600万円です。
助成対象となる経費の下限額は10万円です。
特定の要件(事業場内最低賃金950円未満、または物価高騰等により売上高総利益率や売上高営業利益率が前年同期比で3%ポイント以上低下)を満たす「特例事業者」については、通常よりも高い助成上限額が適用される場合があります。また、物価高騰等要件を満たす特例事業者は、パソコンや一定の車両なども助成対象となることがあります。
3.助成金の流れ
業務改善助成金の申請から受給までの主な流れは以下の通りです。
1.交付申請書の提出: 賃金引上げ計画と設備投資計画を記載した交付申請書を、都道府県労働局へ提出
↓
2.交付決定: 労働局による審査を経て、交付決定通知が会社に送付される
↓
3.事業実施: 計画に基づき賃金引上げと設備投資等を実施
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4.実績報告書及び支給申請書の提出: 事業完了後、事業の実施結果や賃金引上げ状況を証明する書類(賃金台帳、納品書、領収書等)を添付した事業実績報告書と支給申請書を労働局に提出
↓
5. 助成金の受給:労働局が報告内容を審査し、交付すべき額を確定した後、助成金が支給される
↓
6.状況報告: 支給後、不交付要件に該当していないか確認するため、状況報告を提出する
4.令和6年度との違い
事業主単位での申請上限が600万円までに変更されました。(前は事業場それぞれでの条件でした)
大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となりました。
基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が「3か月以上」から「6か月以上」に延長されました。
5.まとめ
業務改善助成金は、労働者の賃金引上げと企業の生産性向上を同時に実現するための強力な後押しとなる制度です。
この助成金を活用することで、企業の競争力強化と従業員の皆様の待遇改善を図ることができます。
しかしながら、助成金の申請手続きは複雑であり、多岐にわたる要件確認や書類作成、厳格なスケジュール管理が必要です。
特に、「交付決定前の事前着手は対象外」というルールは非常に重要であり、これを誤ると助成金が受けられなくなってしまいます。
当事務所は助成金申請に強い社会保険労務士が対応いたします。
ご相談いただくことで、貴社の状況に合わせた最適な申請プランの策定から、煩雑な書類作成、必要書類の収集サポート、労働局とのやり取り、そして事業実施段階での注意点のアドバイスまで、トータルでサポートを受けることができます。
これにより、事業主様の負担を大幅に軽減し、助成金採択の可能性を高めることが期待できます。
賃金引上げや設備投資をご検討中の皆様、ぜひ当事務所での業務改善助成金の活用をご検討ください。