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賃金のデジタル払いの導入

通常、労働者に賃金を支払うときは直接の現金払いか銀行口座への振込で行っていると思います。

しかし、新たな方法として2023年4月から賃金のデジタル払いが可能となりました。

キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズがあるためです。

 

賃金のデジタル払いの概要

使用者が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)ができるようになります。

資金移動業者とは、具体的には○○Payとなります。

現在、指定されている会社はPayPay株式会社1社だけのようです。

指定待ちの業者が数社あります。

労働者が同意した場合のみ、賃金の一部をPayPayで支払う形となります。

 

導入する場合の流れ

①事業所で労使協定

過半数で組織する労働組合の代表者か、それがない場合は労働者の代表との労使協定を結びます。

労使協定の記載例もありますが、

・対象となる労働者の範囲

・対象となる賃金の範囲とその金額

・取扱指定資金移動業者の範囲

・実施開始時期

の記載が必要となります。

 

②就業規則や給与規程への記載

就業規則や給与規程にデジタル払いができる旨の記載が必要となります。

 

③各労働者への個別の同意

各労働者への個別の同意が必要です。

デジタル払いの利用を労働者に強要はできません。

個別の同意書に記名してもらうのがいいでしょう。

 

④賃金支払いの事務処理の開始

業者ごとにデジタル払いの利用方法が異なるため、利用の際に確認してください。

 

 

2024年10月08日

労働安全衛生の手続きの電子申請の義務化

2025年1月1日より、労働安全衛生関係の手続きの一部が原則義務化されます。

どの届出が義務化されるのか、どこで資料作成、提出するのかを確認しましょう。

 

電子申請が義務化されるもの

・労働者私傷病報告書

・総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任報告

・定期健康診断結果報告

・心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告

・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告

・有機溶剤等健康診断結果報告

・じん肺健康管理実施状況報告

が電子申請の義務化の対象となっています。

ただ、義務化されていないものでも電子申請が可能な届出が増えていきますので、これを機に電子申請に対応するのもいいでしょう。

 

入力支援サービスから直接申請書が入力できる

労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスという厚労省のサイトで労働安全衛生関係の申請書を作成できます。

e-Gavと連携すると入力した資料を直接電子申請することが可能となります。

労働者私傷病報告の記入画面です。

全角半角など気になりますが、上から入力事項に従って進めると資料が出来上がります。

一応スマホやタブレットでもできますが、画面が小さいので大変かもしれません。

ただ、スマホで事故現場の撮影、略図として撮影写真を資料添付までできるのでパソコンがなくとも対応可能です。

 

まとめ

電子申請ができるようになると労基署へ来署せずともいつでも申請できるので便利です。

会社の大事な資料を持ち出さなくてよい、提出した資料が確認できるなどのリスク管理の面からも有用です。

いつでも最新の資料が公表されているので古い書式での提出による訂正、再提出もありません。

これを機に電子申請に対応し、効率的な仕事を目指しましょう。

 

2024年10月04日

マイナ保険証の注意点と実務上の対応

マイナ保険証の概要

現在、各会社には健康保険協会などから「資格情報のお知らせ」が届いている頃かと思います。

既存の健康保険証が令和7年12月1日をもって使用できなくなり、マイナンバーカード付帯された健康保険証(マイナ保険証)に完全移行を目指すための措置です。

医療情報の共有化により、薬の処方が重複する恐れがなくなる、手続きなしで高額な窓口負担がなくなるなどといったメリットがあります。

また、保険証の貸し借り防止やいろいろな病院に通院し、薬を多くもらうなどといった不正がなくなることも目的の一部です。

入社後円滑に手続きが済めば2~3日でマイナンバーカードが保険証として使用でき、健康保険証の時よりタイムラグが少なくなります。

マイナ保険証がない人には令和7年夏ごろに「資格確認書」が発行される予定です。

「資格確認書」はほとんど現行の健康保険証と同じようなものですが、有効期限があります。

 

マイナ保険証の注意点

1.すべての病院がマイナ保険証に対応しているわけではない

政府が病院へマイナ保険証へ対応できるようにカードリーダーの設置などを要請していますが、すべての病院や薬局で対応できているわけではありません。

その場合、マイナンバーカードには保険証に関する情報が表面などに明記されているわけではないので「資格情報のお知らせ」を持参するか、「被保険者資格申立書」を記入しなければなりません。

2.子どもが生まれたときなどは遅い

子どもが生まれたときは当然マイナンバーカードを持っていないので出生後に作成します。

マイナンバーカード発行までに時間がかかるため、当然保険証として使用するには発行されるまで待たなければなりません。

3.紛失した場合のリスクがある

この後、自動車運転免許証もマイナンバーカードに移行する流れとなっています。

マイナンバーカードを紛失した場合、本人確認書類がないということにもなりかねません。

 

会社としてはこのように対応してください

会社としては被保険者、被扶養者に「資格確認書」の発行手続きをしてください。

全国健康保険協会に問い合わせたところ、現在在籍している対象者への発行手続きは令和6年12月に発行に関する手続きのフォームができる予定とのことでした。

被保険者や被扶養者の誰がマイナンバーカードを持っていて誰が保険証への紐づけができているかなんて把握することは難しいです。

新規雇用者へも同様に「資格確認書」を発行の手続きをしてください。

社会保険の資格取得届を提出する際に「資格確認書」の発行手続きに関するチェック欄ができるはずですので、チェックしてください。

子どもが生まれたなど被扶養者が増えた場合もマイナ保険証の発行まで時間がかかるため、「資格確認書」を発行してください。

実際の病院や薬局へ行くときは「資格確認書」のみで医療を受けられます。

マイナンバーカードを持ち歩くリスクを考えると「資格確認書」を使用する方がいいと思います。

 

2024年10月01日

2つの会社に雇われたときの社会保険

複数の会社で働く場合、健康保険と厚生年金保険の適用や保険料の取り扱いについて理解しておくことは非常に重要です。ここでは、2社で同時に働く場合の社会保険の適用方法と、保険料の按分(配分)について詳しく説明します。

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の基本

健康保険: 医療費の負担を軽減するための保険で、診察や治療、薬代などが給付されたり、出産や病気、ケガで働けなくなった場合に給料の一部を補填します。

厚生年金保険: 老後の生活資金、障害で働けなくなった場合、死亡した場合の遺族の生活費を確保するための保険で、現役時代の収入に応じて年金額が決まります。

社会保険は、会社に雇用されている社員・役員に適用され、保険料は労働者と会社で折半します。

主たる勤務先と副業先の取り扱い

複数の会社で働いている場合、主たる勤務先(給与が多い、勤務時間が長い会社など)で社会保険に加入します。この会社の名前で社会保険の加入手続きを行い、健康保険証が発行され、保険料を給与から差し引きます。

副業先の勤務が一定の条件を満たす(例えば、勤務時間が週30時間以上、または給与が一定額を超える)場合には、副業先でも社会保険への加入が必要になることがあります。

この場合、主たる勤務先での社会保険の取り扱いとは別に、副業先でも社会保険の加入手続きが行われます。

しかし、健康保険証が2枚になることはありません。

主たる勤務先の1枚のみですのでご承知おきください。

副業先でも社会保険加入が必要な場合には、「健康保険・厚生年金 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出します。この届出により、2社以上での社会保険加入が認識され、適切な社会保険の取り扱いが行われます。

保険料の按分

複数の会社で社会保険に加入した場合、保険料を按分(あんぶん)します。

それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額が決定されます。

この標準報酬月額に厚生年金保険料率、選択した事業所の健康保険料率をかけた保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分して決定されます。

まとめ

2社で同時に働く場合、健康保険と厚生年金保険の適用は主たる勤務先が基本となりますが、副業先でも一定の条件を満たす場合には、その会社でも社会保険に加入する必要があります。

保険料の按分については、主たる勤務先と副業先でそれぞれの給与に基づいて保険料が按分され、調整が行われることになります。

1社目で加入しているからと届出を怠ると、社会保険の調査の時に発覚、遡って多額の保険料の徴収となりかねません。

必要な届出をして、正しく社会保険に加入しましょう。

2024年09月10日

設備投資で助成金!業務改善助成金

業務改善助成金とは?

業務改善助成金とは、職場の最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資を行った場合にその設備投資にかかった金額の一部が助成される制度です。

助成金の額は設備投資の額や賃金を引き上げる人数、賃金額によって変わります。

賃金を引き上げる人数と引き上げる賃金額によって助成金上限額が30万円~600万円の範囲で決定し、現在の職場内最低賃金の額によって助成率が決定します。

設備の購入金額×助成率と助成金の上限のいずれか安い方が助成されます。

例えば30人未満の事業所で、時給30円の賃金を上昇させる場合は最高60万円の助成が受けられます。

職場の賃金が950円以上の場合は助成率75%ですので80万円以上の設備投資をすると60万円の助成となります。

 

対象となる会社は

対象となる会社の条件は

・職場内の最低賃金が地域別最低賃金(各都道府県の最低賃金)から+50円以下の従業員がいること

・中小企業であること

・労働保険料の滞納をしていないこと

・ヤ〇ザでないこと

です。

最低賃金に近い従業員を雇っている場合はぜひ検討してください。

 

助成金受給までの流れ

業務改善助成金の受給までの流れ

➀見積もりを取る

2社からの相見積もりをとります。

➁交付申請書の提出

必要書類を準備し、労働局へ提出。助成金の可否が判断されます。

➂労働局の認定

➃就業規則に事業場内最低賃金を盛り込み

〇条 職場内最低賃金を○○円とする  という文言を就業規則に盛り込みます。

➄設備の発注、納品、賃上げ

交付申請書を提出後なら賃上げできますが、不認定の場合を考慮すると認定後に賃上げとした場合の方が安全です。

⑥事業実績報告

実施したことに関する書類を労働局へ提出します。

⑦助成金の受給

支給決定され、口座に振り込まれます。

⑧状況報告

助成金を受給し終わった後なので忘れがちですが、賃金を下げていないことを報告します。

 

以上が業務改善助成金の流れになります。

助成金を使わずとも最低賃金が上がるのはもう確定しています。

会社は上手に助成金を使い、時代の流れに対応していくことが必要です。

業務改善助成金を使って安価に設備投資をしましょう。

 

2024年05月31日
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