過労死ラインは?目安の残業時間とその他の認定要因
長時間労働が違法な理由
労働者を労働させるとき、労働時間を法定時間以内で労働させていますか?
労働基準法では、原則1日8時間以内、週40時間以内と定められています。
これ以上の労働は違法であり、時間外労働に関する36協定を届出していない企業は罰則の対象です。
36協定を届出していても時間外労働は月45時間、年間360時間が上限となります(特別条項の場合は月100時間、年間720時間)。
これは、単純に長時間労働が人体に悪影響があるためです。
厚生労働省の脳・心臓疾患の認定基準(平成13年12月12日基発1063号、平成22年5月7日基発0507第3号)でも時間外労働時間の目安と業務と発症との関連性について記載しています。
仕事内容に関わらず、ただ労働時間が長いというだけで長時間労働が原因の病気になるという見解です。
また、うつ病などの精神疾患の発症についても労働時間の長さが認定基準の1つとなっています。
電通事件(平成12年3月24日最高裁判例)
長時間労働に関する裁判の判例です。
長いので概要のみ記載します。
(1) Yに新卒採用され、2年目の若手社員Aがラジオ局ラジオ推進部に配属され勤務していたところ、自宅において自殺した。Aが従事した業務の内容は、主に、関係者との連絡、打合せ等と、企画書や資料等の起案、作成とから成っていたが、所定労働時間内は連絡、打合せ等の業務で占められ、所定労働時間の経過後にしか起案等を開始することができず、そのために長時間にわたる残業を行うことが常況となっていた。
(2) Aの両親であるXは、AがYから長時間労働を強いられたためにうつ病に陥り、その結果自殺に追い込まれたとして、Yに対し、安全配慮義務違反または不法行為による損害賠償を請求した。
(3) 本最高裁判決は使用者が「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」ことを明らかにした上で、継続的な長時間労働によるうつ病罹患と自殺について、Yに対し民事損害賠償義務を認めたものであり、過重労働による安全配慮義務違反に係るリーディングケースである。
過重労働としてその他考慮されるもの
労働時間以外に過重労働として考慮される事項を見てみましょう。
勤務時間の不規則性
・拘束時間の長い勤務
・休日のない連続勤務
・終業から次の勤務までの休みが短い(勤務間インターバルが短い勤務)
・不規則な勤務、交代制勤務、深夜勤務
事業場外を伴う業務
・出張の多い勤務
・その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務
身体的負荷を伴う業務
作業環境(長時間労働の付加的評価)
・温度環境
・騒音
となっています。
勤務日数が多い、休養時間が短いなどの場合は過重労働として判断されます。
心理的負荷や身体的負荷などない仕事はあり得ませんので、程度を判断する感じになります。
労災事故に限らず、長時間労働は企業にとって多くのリスクがあります。
業務改善やDXなどをうまく取り入れて少しずつでも労働時間を短くする努力をしましょう。