ハラスメントと企業の義務
ハラスメントとは
ハラスメントとは、簡単にいうといやがらせです。
さまざまなハラスメントがありますが、企業が対応する義務があるのは
・パワーハラスメント
・セクシャルハラスメント
・妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメント(マタハラ)
の3つとなります。
パワーハラスメントとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(労働施策総合推進法第30条の2抜粋)とされています。
しかし、実際には部下から上司へのパワハラも認定されていて、職場内のいやがらせ全般ととらえてもいいでしょう。
セクシャルハラスメントとは職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(男女雇用機会均等法第11条抜粋)とされています。
男性から女性への言動のみならず、女性から男性、同性同士でもセクハラになりえます。
妊娠等に関するハラスメントとは、育児介護休業法第25条、男女雇用機会均等法第11条の2から職場において行われる妊娠出産した労働者や育児休業等を取得した労働者の就業環境が害されることとされています。
育休取得(予定)者に対するいやがらせなどが該当します。
これらのハラスメントは事業主が行わないことは当然、労働者に行わせないようにする必要があります。
ハラスメント防止のために企業が講ずべき措置
ハラスメント防止のために企業が講ずべき措置として定められているものがあります。
・事業主の方針等の明確化および周知、啓発
職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
・職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に確認すること
速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)
・併せて講ずべき措置
相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
ハラスメント対応をミスすると ...
ハラスメント対応をしない、またはミスするとさまざまなリスクが出てきます。
まず訴訟リスクです。
社内でハラスメント対応できない場合、被害者が加害者を訴訟する可能性があります。
この場合、企業が適切な対応を講じなかったとして訴えられるケースもあります。
他には行政の刑事罰などのリスクです。
厚生労働大臣はこの法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対し報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる(男女雇用機会均等法第29条 / 育児・介護休業法第56条)
勧告を受けた者が従わなかった場合には厚生労働大臣はその旨を公表することができる(男女雇用機会均等法第30条 / 育児・介護休業法第56条2)
報告をせず又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する(男女雇用機会均等法第33条 / 育児・介護休業法第68条)
とあります。
労働施策総合推進法にも
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる(第33条)
勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(第33条2)
厚生労働大臣は、事業主から雇用管理上の措置や、不利益取扱いの禁止等の施行に関して必要な事項について報告を求めることができる(第36条)
規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(第39条)
と社名公表と刑事罰に関する条文があります。
他にはSNSなどに被害者が私的に公表するリスクがあります。
対応に不満を感じ、加害者のことや会社のことを書いてしまうパターンです。
この場合、事態の収集がつかなくなります。
他にも派生して社員のモチベーション低下や新入社員が入ってこなくなるなど多くの問題がでてきます。
従業員同士の些細なもめ事として終わらせてしまうと大きなリスクを抱え込む可能性がでてきます。